英雄気質~SWEP3を見てからEP5,6を見て
○失敗は成功の母
ルークはダゴバ星で修行途中に、ハンとレイア友達の危険を感じてかけつけようとします。
私がEP5を最初に見たのは学生の頃だったんですが、ヨーダがルークに「冒険だ?スリルだ?、ふん、そんなものジェダイには必要ない」と言うのにはむっとしました。だって、SWってスリルと冒険の物語じゃないの?若者が未来を見て何が悪いの?って。
まして、ルークにとって無二の親友(しかもハンにはホス星で救われた恩義がある)が危険に陥っているのを、救いに行くな!という爺さん達二人の考えが、「友情」よりも大切なものがこの世にあるとは思えなかった私には、到底納得できなかったです。
また「彼らを救うことができても、彼らがそのために戦っているものを失うだろう」と言うヨーダの言葉が何を指してるのかわからなかったです。今でも、EP5でルークが駆けつけたことが原因で彼らが失ったものはないように見えるんですが、、、、、??彼らはルークのために戦ったのに、当のルークが心身負傷したってことですか?(わかる方教えて下さい、願)
修行もしないで救いに行くのは「無謀」かもしれないけれど、自分のせいで苦しめられている友を見捨てておけないルークに対し、「より大きな目的のためにはやむをえん」と言い切るとは@@;。
ジェダイナイトのかつての社会貢献を知った今は、それがジェダイと言うものだとわかります。大切なものの喪失を恐れず、フォースの意思に逆らわず、社会に滅私で尽くすのがジェダイだと。「死」もまたフォースの意思だから、逆らってはいけないと。。
でも当時は、大きな目的を優先して友人を見殺しにすることはできない、行っても無駄かもしれないけど、何かできるかもしれない、というルークの言い分が正しいように思いました。ヨーダの言ってることが、まるで全体のためなら個の犠牲はやむを得ないみたいな考えに聞こえて私にはピンと来なかったのです。
しかし、EP2と3の大切な人の喪失を予感したアナキンの転落過程を見てからだと、なるほど~と、言いたいことがよくわかるのでした。特にパドメを救おうとして、パドメの愛したものをアナキンが奪ってしまった顛末を見た後では、よくわかるヨーダの教示でした。
不吉な予感がした時は、それに振り回されず心沈めて時を待つしかないのです。けれど性急な若者は、無謀さによる失敗で学ぶことでしか、それを悟れないので、ルークもアナキンと同じく走り出してしまうのでした。
バイクの暴走行為で怪我をしなければ、暴走は危険だとわからないのと同じでしょう(笑)。
○ハリーとルークの英雄気質
ハリーポッター~不死鳥の騎士団~では、ハリーがたった一人の肉親と言えるシリウスに危険が陥る夢を見て、彼は我を忘れて仲間と助けに向かいます。それまでハリーが見る誰かが危険に陥った夢はいつも正夢で、彼はその夢によって救出に成功してきたのです。
ところが、その夢はヴォルデモート卿が巧妙に仕組んだ罠で、ハリーは敵の懐に落ち、ハリーは自分だけでなく、親友まで無駄死にする危険にさらしてしまうのです。そのハリーを今度はシリウスが助けに来ますが、その戦いでシリウスは命を落としてしまいます。ハリーは最愛のシリウスを救いたい一心で、冷静に状況判断できなかったため、シリウスを失うという悲劇でした。
ルークとアナキンとハリーには共通点があるんです。愛する人の危険を感じると、無謀とわかっていても救出に向かってしまうこと。ハリーポッターでは英雄気質と表現されていて、ヒーローとはそういうものなのですが、一方愛する者の喪失を人一倍恐れる心の弱さと自分なら救えるという力への過信があるともいえ、暗黒の罠もそこにつけこんで来るわけです。
改めて感じるハリーポッターとスターウォーズの共通点なのでした。
(以前ハリーポッターの感想をSWとの共通点を絡めながら書いたことがあります。興味のある方はこちらへどうぞ)
○ピグマリオン効果
EP5で、ルークに「お前をベイダーのように取られたくない。」というオビワンに思わずほろり。そりゃあそうだよね(涙)。
でも今度はちゃんと皇帝の真の目的がヤングスカイウォーカーだとわかってるから、対策も講じやすい。20数年前敵の正体がわからなかった時と違い、オビワンとヨーダでルークをかわいがってるし、皇帝には一切近づけていないので、今更あんな気色悪い爺さんの言いなりにならないだろう?<ルーク。
かつての経験から、ルークの予兆も皇帝の罠だとわかるので、なんとかルークを止めたい二人ですが、修行を積んで何も失うことを恐れないジェダイでもない限りは(EP3のアナキンの失敗を見た観客でない限りは)、通常の価値観ではとっても止められないでしょう(笑)。
そこでオビワンは制止を諦め、ルークに助言と励ましを与えます。ヨーダもそれに習います。オビワンの言葉には、「この子なら、乗り越えて帰って来てくれる」という信頼とその子の未来への希望があります。未熟な若者であっても、愛情を持って信頼と期待を寄せていることが、ルークにもきちんと伝わっているのでしょう。本当は禁止したいのを黙って見送ってくれた二人だから、ルークもまたその信頼に答えて必ず戻って来ることを決意するのでした。
期待されれば期待通りに成長し、信頼されれば信頼を返してくるという、、、結果的に、ルークは傷を負いますが、レイアとハンを助け無事ダゴバに戻ってきます。非常にポジティブに歯車がかみ合っているように見えました。
その点、アナキンに対しては「動くな!辛抱せよ!」と禁止を強いてアナキンの反抗心を肥大させてしまったのですが、かつてのあのオーダーの体質と社会情勢では、アナキンの失敗の旅を温かく見送る余裕がなかったのもいた仕方がないなと思うのでした。
オビワンは赤ん坊の頃から見てきたルークは孫のようにかわいいのでしょう(^^)。
ルークの妹への思慕を「思いは胸に秘めよ」「優しさに皇帝はつけ込んでくる」というオビワン、「深すぎる思いは危険だ!」と言わないこの寛容さがとっても心地よいのでした。
少なくともオビワンはルークを「選ばれし者の末裔」などという本人にとって何ら意味を持たない肩書きで見てはいません。
それもこれも、アナキンの失敗があって、初めて自分たちの盲点を悟った老ジェダイ達なのでした。
○Why did'nt you tell me?
ルークのこの嘆きが当時、胸に突き刺さり切なかったです。
修行を終えたら真実を教えるつもりだったのでしょうか、、少なくともオビワンには、そういう意図を感じません。
オビワンは、ルークをベイダーに引き合わせることに成功し、ベイダーに自分を殺させる瞬間をルークに見せます。オビワンは実の親と知らずにルークがベイダーを殺す、あるいは知っても完璧なジェダイとして無我の境地で悪のベイダーを殺すことを望んでいたようです。
それはそれで人の道として残酷ですし、「自然」の意思なのか微妙なところですが、それが私情を完全に廃し大きな目的をなすべきという既存のジェダイ教義の壁だったんでしょう。
ルークが、実の父がベイダーと知った時、父のライトセーバーをなくすシーン、(それもオビワンがベイダーを倒して回収したものですが、)ルークにとって、それは父とオビワンへの憧れを象徴したものだとわかります。
ベイダーが父だという現実、オビワンが嘘をついていたという現実・・・・ルークはそこで無邪気な憧憬を喪失し、現実を知る大人へと成熟して行くのでした。
ルークの青春の苦悩を、若い頃は我が事のように感じていたEP5でした。
○父と子と
EP6では何の詳しい事情も教えてもらってないのに(実はオビワンもわかってないのかも)、ルークは怒りでベイダーの機械の腕を切り落とした時、はっと我に返ります。そこで瞬時にして父の苦難の人生をルークは悟り、剣を捨てて、「僕はジェダイだ、父がそうだったように」と胸をはるのです。そのルークの勇姿は、当時の私にとって理想のヒーロー像でありました。
でも今見ると涙が出るほど良くできた子だと、親のように熱い気持ちがこみ上げて来ます。
アナキンが、ルークの養父母やオビワン・ヨーダ、この子を取り巻く全てに、フォースに感謝の念を抱いた時、父なるフォースも見事使命を果たした我が子の苦難の帰還を祝福するのだと思います。
皇帝と対決年齢がルークは32歳くらいで、アナキンはまだ24歳の時だもんね。納得(違!)
○ふと思う。
なんで、ルークがシスと戦う時、オビワンとヨーダは助けを出せないのでしょう?シールドみたいのがあって、中には入れないのかな。
シスとスカイウォーカーの対決はいつも密室で行われるのでした。
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