ログハウス

趣味の画像と家族日記。 主に児童向けの映画、書籍、TVの感想や家族の話題を徒然に綴ってます。

映画「ブロークバック・マウンテン」感想 ★★★★★

Posted by ふざけおに on   2 comments   0 trackback

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この「ブロークバックマウンテン」を見てから、だいぶ経ってしまったので、感動も旬が過ぎたというかボケてますが、非常に質の高い名画だと感じました。
北米西部の雄大な自然とカウボーイ、アメリカの古き良き時代の郷愁を漂わせながら、決してその時代の古い因習にあって許されることのない一つの純愛を叙情的に描いています。
前評判通り、ほろりと泣け深い余韻に浸れる作品です。
以下ネタバレありです。
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夏山で偶然、牧羊の番をする二人の男性が、大自然の中で、ごく自然に愛し合います。
婚約者がいるイニスは、自らが及んだ行為に自らが驚き理性が否定しますが、雄大な自然の前では愛は自然そのもので、むしろ固定概念に囚われた理性こそが自然に逆らったちっぽけな異物なのかもしれません。
一方のロデオ使いの美青年ジャックは、元々自分がゲイであることを自覚していただろうと思われ、それを受容し、自分の心のありのまま素直に生きていこうとする青年でした。
この二人の物のとらえ方考え方の違いが、その後の二人の人生を時に切なく、時に熱く、そして悲しく、交錯していく人生を暗示しているのです。

ある日、牧場主は二人の関係に勘づき嫌悪して二人を解雇し、二人はそれぞれ大自然の懐から人間の常識が息づく日常へと戻されます。
イニスへの愛を正面から受け止めるジャックは彼との再会を望むのですが、イニスはその熱い視線を尻目にクールに去って行きます。しかしジャックの視界から離れた途端、イニスは激しい嘔吐に見舞われます。それは愛を喪失する悲しみなのか、ジャックを抱いた己の弱さを苛む理性の鉄槌、激しい自己嫌悪なのか、、、、。
イニスは子供の頃、厳格な父親に、同性愛者のカップルが集団リンチの末虐殺され、見せしめに死体を晒されてるのをしっかり見せられた記憶を持つのでした。
彼はジャックへの愛は世間では絶対許されるものではないとわかっているので、全てを忘れ婚約者と結婚して人並みの人生を歩もうとします。
やがて、妻との間に子供を設けますが、どこの家庭でもありがちな光景へと、貧しい生活に追われた日々は色褪せていくのでした。

そんな中、ジャックから一通のはがきが届きます。薄汚れた日常の繰り返しで鈍磨したイニスの理性は、わき上がる汚れなきかつての情熱を押しとどめることはできなかったようです。
もちろん、ジャックの思いは歳月で揺らぐことなく、そしていつもそれに正直です。二人は再会を果たし、釣りと称して人目を忍んでその後幾度も逢瀬を重ねることとなります。
ちなみにジャックも富豪の女性と結婚して子供がいます。ジャックの妻は古い価値観を強いる父への反抗心もあって自由奔放な美青年ジャックに刹那的な恋をしますが、やがてジャックがゲイであり他に意中の人がいることを理解し、仮面夫婦仮面父親でもそれを割り切る前衛的センスの持ち主でした。
ジャックとは友情関係で彼女はかまわないのです。彼女は仕事に生きるキャリアウーマンで、自分に合った男勝りで奔放な生き方ができれば、夫はいてもいなくてもかまわないタイプなのでした。
しかしイニスの妻はやはりイニスの妻で、古典的価値観を頑なに持ち合わせています。イニスの妻は、夫がゲイであることを知り、夫の不義と神への冒涜を許すことができません。やがて夫婦は破局します。

イニスが離婚したと聞いたジャックは、イニスは古い因習を捨て自分との愛を成就させるのだと小躍りして彼の元を訪れますが、イニスは世間の偏見が自分達や子供達を破滅させると考えており、共に暮らし牧場を営もうと夢を語るジャックを暗く突き放すのでした。離婚の痛手に苦悩するイニスと、その不幸に思い及ばず我が世の春のごとく舞い上がっていたジャック。
一人帰るジャックは、夢打ち砕かれ涙します。
ジャックは二人の間に立ちはだかるものが制度上の婚姻という契約書一枚ではなく、世間からの偏見というよりやっかいなものなのだと改めて思い知るのでした。
一人は自分の正直な思いを受け止めてもらえない苦悩を、もう一人は神の教えに背き妻子を不幸にした苦悩を、それぞれ抱えながら、その後も二人は時々会うだけの関係を何年も続けます。
が、ある時ジャックは会える時間の少なさに不満を爆発させ、渇望に耐えられないと激しくイニスに食ってかかります。ジャックは女性を代わりにして肉体的な満足を得られない側だというのも一因のようです。イニスはジャックとの出会いで人並みの幸福を失ったことを罵り、二人は傷つけ合います。
その渇望を我慢できないならば別れるしかないと告げるイニス。うつむくジャック。
イニスはジャックの背中を抱き、大自然はそんな彼らを20年前と何ら変わることなく優しく包み込むのでした。
それが二人のこの世で最後の抱擁でした。

イニスはジャックの死亡の知らせを、ジャックの妻から受け取ります。表向きは事故と伝えられますが、ジャックはゲイを蔑視し排除しようとする暴徒に惨殺されたのだとイニスは理解します。
やはりジャックはこの時代に生きるには正直過ぎたのです。
イニスはジャックの生家を訪れ、彼の部屋から無くした自分のシャツを発見します。
ブロークバックマウンテンで別れ際にジャックと殴り合い、その血をぬぐったものでした。それはブロークバックマウンテンの思い出の品で、ジャックはあの輝かしい時を永久に止めておきたかったのでしょう。
シャツの血はそのままでした。
あるいはあの血は同性を愛してしまったことに困惑するイニスの自傷行為に似て、イニスの心から流されたものに思えたから、ジャックはそれをそのままにその痛みを共に感じ続けていたかったのかもしれません。
イニスはそれを遺品として持ち帰ります。

歳月はさらに流れ、老いたイニスの元に娘が結婚を告げに彼の家を訪れます。娘は父が何故こんな人生を送るのかがわかる年頃になり、そしてわかるセンスを持ち合わせていそうです。
娘の結婚を感慨深く思う父としての愛・・・・彼女は結婚式で一人の男性と永遠の愛を誓い、父の愛を巣立っていくのです。皮肉にも愛を知ってから、教会を敬遠し続けたイニスですが、彼女の晴れの門出を見送ろうと思うのでした。
そして一人ここに生きるイニスは、静かにロッカーを開け、思い出のシャツとブローバックマウンテンの写真を前にして、今は亡きジャックに、永遠の愛を誓うのです。

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○ジャックの純愛
ジャックを見ていると、妻子ある男性と不倫に落ち、けなげに彼との逢瀬を待ちこがれる若い女性そのもののようです。ひたすら彼が自分の元に来てくれる日を夢見てはうちひしがれ、でも心は自分のものだと言い聞かせ、待ち続ける切なさが。
でも不倫の場合は妻と離婚してしまえばことはだいたい済むのですが、いかんせん、二人の間を隔てるのは、法律ではどうしようもできない、世間の偏見と差別だというのが、より超えがたい壁だと実感させられます。

○女は即物的、男はプラトニック
この物語の限って言えば、女とは肉体だけのつながりで精神的なつながりを求めるに値しないもののように思えますな。
にしても、イニスの妻は被害者で、イニスはジャックとの関係で妻子を不幸にしてしまった以上、自分だけが幸せを得ることができないと考えるまじめな男なのでした。
その点、ジャックの妻はジャックとの関係をビジネスのように割り切れるモダンさが面白かったです。
ジャックの妻と、イニスの娘は、世間からは許されざる愛を許容する新しい人たちなのかもしれません。

とか、いろいろ見たときは感想が次から次へとわき上がる映画でしたが

スターウォーズエピソード3のムスタファーは、ブルーバックマウンテンだったなとか(バカ)

まあ率直に言って、この映画を男性はどう思うんだろうか。館内女性ばかりで、皆一様に感動と余韻に浸ってる感じでしたが、男性の反応が気になります。
うちの父や旦那はゲイと言うとうーんと生理的に気持ち悪がりますが、、、
DVD発売になったら旦那にこれを見せてどう思うか反応を見たいと思います。
ちなみにこれが女性同士なら、それはそれで変なこと考えすぎて、男性は乗り切れないかも。
Vフォーは女性同士でしたが、いやらしさのないきれいな映像でした。

自然界では、動物が雄だけなると、雌の役目を果たす個体が発生するものらしいです。猿のマウンティングは雄の上下関係を表すものらしいですが、下位のものは雌扱いにするあたり、人間に近いものを感じます。
虫の性に至っては色々個体によって不思議な現象があるらしいですが、ショウジョウバエには3分の1の確率でホモセクシャルが発生するので、これも何か自然にとっては理由があるんだと科学館で解説されてました。
何にせよ、偏見によって排除したり理解できない者を抹殺したりすることこそ、自然に逆らう行為なのだと人は知るべきなのかもしれません。

同人の801小説を極めて、ブロークバックマウンテンくらいの愛の普遍性を描ける作品が世に出てくるといいですね。
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Comment

卍 says... ">映画「ブロークバック・マウンテン」感想 ★★★★★"
正直この映画を見終わったとき、「何が良かったんだ?」と疑問に思いました。
いまいちメッセージが伝わってこなかったというか、ジャックとイニスがどうして急にそうなっちゃったわけ??みたいな、腑に落ちない箇所がいくつかあって。
でもこのスレを読んでなんとなく納得できた気がします。
同性愛だからこそ、偏見や差別を乗り越えて築く愛って尊いんだと思うんです。人を愛することに勇気は必要なんだな、と思いました。
2006.11.20 01:02 | URL | #- [edit]
おに says... ""
卍さんへ
コメントありがとうございます。
私はとても良い映画だと思いましたが、
抵抗ある方もいるとは思います。
ジャックとイニスは異性以上にお互いを素直に
理解しあえる仲にはなってたんですが、
肉体関係に陥るきっかけは、ジャックが元々
自分がゲイだと自覚してたので、イニスを誘惑して、
イニスはそれを拒めなかったという感じでしたね(笑)。

>偏見や差別を乗り越えて築く愛って尊い
ヤスパースが奥さんがユダヤ人だったため、離婚を迫られ
苦悩した話を思い出します。
それはそれで辛そうでしたが、見る人から見れば理不尽だとわかりますよね。
でも同性愛の場合、時代は進んでもなお、
嫌悪されるものなんですよね。

何にせよ私が感じたのは、それぞれが持つ特性が、
いかにそれが純粋で善良であっても、
世間の多数派から見て異質な物だと排除されても
仕方がないという風潮が野放しになるのは、
良くないなと思うのでした。
ゾウリムシには毛がいっぱい生えているのですが、
そのうちの15%は、進む方向に動き、60%はその15%の指令に従って進む方向に動くように従うそうです。
で、残りの15%は全く無意味にてんでばらばら好きな方を向いてるんだそうです。
これも生物学的に意味があるのだろうという話を、以前ある教育関係者の講演会で聞いたことがあるのですが、
ゾウリムシ残り15%は、予期せぬ危険、環境の激変に適応する際に、力を発揮する可能性を残すために、今良いと判断される方向にあえて向かないのではないかということでした。
人間も15%くらいちょっと嗜好が変わった人がいた方が生物学的には子孫を生かすのに安全なんだと言いたかったようです(笑)
2006.12.06 12:47 | URL | #mQop/nM. [edit]

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