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趣味の画像と家族日記。 主に児童向けの映画、書籍、TVの感想や家族の話題を徒然に綴ってます。

宇宙戦士バルディオス ~その悲劇性 1

Posted by ふざけおに on   0 comments   0 trackback

時代が求めた悲劇

○核状況下の漫画
80年代、東西冷戦下、我が国は、核抑止力の下での平和と繁栄を享受しつつ、その矛盾に被爆国日本人のアイディンテイは揺れていた。キューバ危機のような一即触発の事態と隣り合わせの現実が平和の影に潜んでいた。
81年、日本ペンクラブ会長に就任した井上靖は、「核状況下の文学~なぜわれわれは書くのか~」をテーマに84年、国際ペン東京大会を開催した。作家があえて世界中の作家を前にそのテーマを選ぶ理由は、宮崎駿が「風の谷のナウシカ」を、石森章太郎が「サイボーグ009」を描き続けた理由と同じだろう。それらに代表される漫画アニメ文化もまた核状況下の漫画文化だったのだ。。
そして「宇宙戦士バルディオス」もまた紛れもなく核状況下の漫画文化であり、大量破壊兵器による地球の破滅という近未来をクリエイター達が描かずにはいられなかった時代の作品群の一つだ。あの時代の憂いが、悲劇のバーチャル体験を求めたのだ。
破滅後の世界は過去のものとして、その後の大地と人類が新たに共生していくナウシカのような作品と違い、同時期に放映されていたイデオンとバルディオスは現在進行形で破滅していくドラマであり、現在進行形で崩壊していく物語の重大な伏線として、過去あるいは未来に破滅した世界を内包した作品であったことに特徴があると思える。

3月25日のこの日記に「NHK特集~映像の世紀 第2集~第1次大戦後のチャーチルの手紙」の一部を紹介したが、その後手紙はこう続く。

これから先に起こる戦争は、女性や子供や一般市民全体を殺すことになるだろう。
やがてそれぞれの国では、大規模で限界のない一度発動したら制御不可能となるような破壊のためのシステムを生み出すことになる。ここに来て初めて人類は自分たちを絶滅させることのできる道具を手に入れた。これこそが人類の栄光と苦悩の全てが、最後に到達した運命である~


実は今年2月に久々にこのDVDを子供らと見たのだが、柴田秀勝さんと思われるこのナレーションを聞いた瞬間、私の脳裏によぎったのはデギン公王ではなく、ガットラー総統だった。

時代を超えて求められる悲劇
時代が求める悲劇、世界の破滅をX軸とすると、バルディオスはもう一つの悲劇、男女の悲恋というY軸で構成されている。イデオンは恋愛そのものをさほど大きく扱っていなかったのと、悲恋自体にはラストに救いを持たせているため、それがないバルディオスは時により強い悲劇性を見る者に与えてしまうことになる。
(私自身は悲劇性はイデオンの方が強いと思うが、それは後述する)

地球破滅という悲劇は時代が求めたものだが、男と女の悲劇はこれは古今東西を問わず、常に文芸作品に求められた要素だ。オルフェウスやイザナミの神話から遠野物語まで、世界各地に悲しい恋の民間伝承がある。生命の連続を司る恋愛は自然から派生し、いつしか知恵と理性を持つ生物にとって文化の源流となる。生物である以上、人間は恋愛話に共感する性がDNAに刻まれているのだ。
にしても、何故、悲恋物語が、人々の記憶の篩に残るのか、、、、ハッピーエンドとの総数を実数で比較してるわけでなく印象なので拙攻この上ないが、民話でいえば遠野物語のオシラサ、文学で言えば鴎外の「舞姫」「嵐が丘」「ハムレット」とか、名画で言えば「風と共に去りぬ」「ひまわり」「カサブランカ」「タイタニック」とか、、、たまたま自分が好きなものが悲恋ものなだけかもしれないが、おそらく悲恋の方が、愛が掛け値なくより純粋だから、その悲哀が人の感情を強く揺さぶり、記憶に残るのだろう。
若い頃さほど興味なかった「源氏物語」だが、妙に年を取るとこの作品に登場する人の心情が、実は非常に普遍的なものだとわかって来る。世界最古の小説と言われるこの物語が、何故千年もの間読み継がれるのか分かってきたというか、、、、
もしこれが栄華を極めた源氏の光輝く人生で話が終わっていたら、多分ここまで人の記憶に残らないだろう。万物諸行無常の理の中、紫の上と愛し合いながらもすれ違っていき、最後には真実の愛をロストしていくその虚無感こそが、時空を超える文芸の真髄なのだ。、
バルディオスに話を戻すと、実は私はこの作品の悲劇の真髄は、世界の破滅にあるのではなく、本当は愛し合いながらも決してそれが成就することなく、すれちがっていく男女の悲恋にこそあるのだと思う。
20数年ぶりに劇場版を見直して思う。東西冷戦が終わってなお、この作品に脈々と息づく悲哀は、Y軸上の線なのだと。
そして、果たしてこういうアニメ作品は、私の知る限り希有だと思える。

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